☆Stage8.霧に消える魔族な面々
2日目(9月16日)05:00時 コテージ玄関
虫の知らせ・・・何かが動き始めていた。あたりはまだ闇に包まれたままだった。遠くから木の葉を叩く水の音や水分を含んで重く立ち込める空気も充満していた。
そんな中、ヤツ等は着々と準備を整えていたのである。
魔王[かず♪]さんを筆頭に、女帝[つき]さんと魔婆’Sを結成した[Mにゃん]、昨日アテントの片鱗を見せてしまった[マツバラ]さん、アテントの師として君臨することになった[TAKA]さん、最近トラブル無しでつまらん(爆)[ダサMac]、萌蔵こと[JAY]、やはり魔女ッ子だった[ぽこちゃん]、そして我等が[殿]のオールキャスト9名・・・悪魔っちはこの時まだ夢の中、一体どんな夢を見ていたのか気になるところだが・・・で霧の乗鞍攻略へ向け出発して行った。
昨夜開かれた「魔族円卓会議」の席で急遽決った、翌朝見込まれる(だれかの希望的観測)雨上がりの間に出発、一気に待望の乗鞍を攻略して朝食前に帰って来ようという、天気がよければ朝食前の、言うなればモーニング・エクササイズになるはずだった。
「本当に行くの?なんにしても気をつけぇや!」
そんな物好きな面々を送り出して、再び床に着く。2度寝程ではないが、やはり他人が起きている時に布団の中に居られると言う快適感はなんともいえない幸を感じるのは私だけだろうか。
そんな留守番隊が未だ布団の中にあるころ、この「雨天早朝乗鞍攻略魔族痴呆連合隊」(長いので以下「雨魔痴(あめまち)隊」)は酷寒の地へ踏み込もうとしていた。
が、ゲート・オープンにはかなり早すぎたようで、高高度で更に下がった気温と、それを加速させる濃霧とで、ゲートを前にしてぶるぶると寒さに震えていたらしい。
(雨に霧・・・魔族の活躍する格好の状況ではあるが、気温が低すぎた・・・らしい)
「寝たらダメだ!死んでしまうぞ!!(ピシッ)」
「殴ったね?親にも殴られたこと無いのに!(ドスッ!)」
なんて、使いまわされた漫談が[JAY]と[ぽこ]ちゃんの間であったかどうかは定かではないが、なんにしてもその寒さたるや尋常では無かったようだ。
(実際には、ダサMacを中心に押しくら饅頭して暖を取っていたのでした。。。<別名、ダサいじめ(爆))
果たして、この「雨魔痴隊」が有効視界ゼロな畳平に到着したころ、留守番隊は彼等の帰りを待つこと無く、早々に、それも当たり前のように朝食を頬張りはじめていた。
美味しい空気の下で炊き出される米のなんと美味しいこと。
ただし・・・納豆はイカンよ、納豆は。ここぞとばかりに[ばたやん]あたりはこの物体をこねくり回していたのだが。
「全部食べちゃダメよ。後の人のが無くなってしまうからね」
と言う管理人さんの言葉など耳に入らぬのか、皆の食べっぷりのよさは記録的なものだった。おかげで「雨魔痴隊」の白飯が少なくなってしまったのはここだけの秘密なのだが。
留守番隊の朝食が終ったのと交互して、「雨魔痴隊」が帰還、遅めの朝食となるのだが・・・その飯の量の少なさを訝しく思ったかどうかは、未だに明らかになっていない。
(ちゃんと御宿の方に新たに炊き上げてもらったご飯は、萌え蔵JAYが納豆5個をおかずに食べ尽くしたのでした。。。(爆))
「雨魔痴隊」のご帰還
食べる食べる食べる食べる・・・・・・・(^_^;)
☆Stage9.マーチング・オーダー
2日目10:00時 コテージ内食堂
「最短ルートは塩尻から中央高速道経由のルートになるんだが・・・」
「県境の“恵那トンネル”付近では大雨が降ってるみたい。」
「渋滞も既に始まってるらしい・・・それも凄いのが。」
「中央の渋滞はシャレにならんし、道も狭いもんねぇ。スリ抜けするのも大変だわな。」
「(長野)全域で降水確率は高いけど、北部はマシなようだよ」
既に降り始めていた雨に、この日のルート会議が始まっていた。
[マツイシ]さんとその友人の方は早々にこの地を離れ、本降りになる前に帰ると言い残して既にココには居ない。
「長野道を一旦北上、関越道経由で東京を目指すのと言うは?」
「たしかに、関越は中央より流れもいいが・・・」
「なんせ距離がね。。。」
「こうなりゃ二者択一じゃない?」
「当初案通り渋滞の中で雨に強く打たれるか、それとも雨雲を避け、迂回ルートを取るか!?」
「ご決断を!!」
一斉に視線が[殿]に集中する。ナルな彼にとっては最高の瞬間だっただろう。
とまぁ、冗談はさておき、渋滞+雨というのはあまりにも惨かろうということで、迂回案で決定。
それからボチボチと帰り支度を始めるころには霧も晴れ、空も幾分明るくなってきていた。
用心の為、カッパを着込むものも居たが、当の私は幾多の情報と長年の勘を信じて通常装備での出発とした。単にカッパを着たくなかったというのが正直なところなのだが。。。
なにわともあれ、こうして壮大なくらげの「長征」ロング・マーチが始まろうとしていた。
集合写真!
☆Stage10.よりにもよって
2日目11:00時頃 松本市街
明け方まで降り続いた雨の為、路面コンディションは決していい物ではなかったが、所々にドライなところもあって、そこそこのペースで走り出す。
前日最後の給油を行なったSSでこの日最初の給油となったのだが、ついに雨がぱらつき始めてしまった。
そそくさと雨具を着込み、再び走り始めるのだが、新愛機CBR600Fを手に入れてからというもの、トラブルとは無縁となってしまっている[ダサMac]がいきなりスローダウン、何かを思い出したかの様に一人Uターンしてしまった。聞けば大事なリュックを先のSSに置き忘れてしまったようで、実は前日もここでこのリュックを置き忘れていたのである。
リュックはこの何かと物騒なこのご時世、不振物かと不気味がられて無事だったみたいだが、それにしても同じことを、しかも同じ場所で繰り返すと言うのは彼にも「アテント化」が着々と進行しているということの証なのだろう。
途中、コンビニで一息入れるころ、空の雲は薄くなり始めたものの、出発準備を始める頃に一時的に強い雨が降り出す始末。
場所を違えて出かけている某Mun氏が富士五湖界隈で大雨に遭遇し、大慌てで撤収したとの情報をあざ笑っていた正にその瞬間の出来事だった。
雨足が弱まる頃、これからの大まかな行程が[殿]より評定され、次の休憩ポイントは長野道「姥捨(おばすて)S.A」と告げられる。
その余りにも禁句的地名に固まったメンバーも数多くいたはずだが、勿論冗談すら言えるはずも無く・・・が、やはりそこは「悪魔っち」と呼ばれるだけのことはある[あっち]さんは、
「ここで何人置いていかれるんだろうねぇ。。。」
と、怯む周囲をよそにサラっと口に出してしまうところは、流石というか、鬼というか。
当然のように「まぁぼぅず」から“ド突き”の洗礼を受けることになるのだが・・・それにしても他にも適当な候補はあっただろうに、なぜにまたこんな名を選んだのだろうか。。。
☆Stage11.魔のリサイクル運動
2日目12:30時頃 長野道姥捨S.A
トンネルを抜けると、そこは雪国だった・・・なんてことがこの時期あるはずもないが、それまで小康状態であった雨もすっかりあがり、北の空には青ささえ広がっていた。
S.A手前のトンネルではラストスパートと言わんばかりに、追い越し車線を巡航していく面々であったが、中盤に位置していた[あっち]さんがひとたびアクセルを開けると
「ぐぅわぁおっっっっ!!」
耳を劈く程のエキゾースト・ノートを轟かせ、次々へと車を追い越していく。
あまりの音の凄さに、直ぐ後方を走りながらこの音&姿を見た[みこやん]は、恐怖の余り泣き出してしまったらしい。(完全な誇張表現)
そうして後、問題のS.Aに到着するのだが、その名の通り、どこか物悲しい雰囲気さえ漂っていると感じたのは私だけでは無いはずである。
一方、見上げる空からは当分雨の心配も無さそうなので、雨具を脱ぎ始め、気の早い者はさっさと折りたたんでいた。
「さて、昼飯っ!」と思ったが、最後尾を走っていたはずの[ばたやん]の姿が無い。
「そういえば[SHIN]も居ないね。。。」
松本I.Cから小一時間。決してカッ飛んできた訳ではないが、確かに途中で彼を続け様に追い越しはしたが、それにしても・・・遅すぎる。
幾多の不安がよぎるが、その心配も直ぐに杞憂であったと安堵する。
その時シールド越しに見えた[ばたやん]の目が何かを訴えていた・・・ように見えた。そう、なぜかこの時そう思えたのである。
それが何であったのかは判らないが、漠然とした何かを抱えランチと相成った次第で。
千曲川を眼下に望むそのレストランからは、きっと晴れていればもっといい眺めであったであろう白馬の山谷が所々顔を出していた。
各々食事を済ませ、暫しノンビリとした時間を過す。が、とある御方達は「捨てられるんじゃないのか」と戦々恐々していたらしい・・・と、あくまで想像の世界である。
しかし、今の世の中これだけリサイクルが進んでいるのである。捨てられた○○はどうやってリサイクルされるのだろうか。まさか産廃ってことはあるまいが。
おそらく捨てられた○○からリサイクルされた紙を使って作られた(嘘)地図を前に、今自分たち居る場所と、これからのルートを確認すると
「やっぱうち等、アホだよなぁ。。。」
長野の中部を出発して、北部を経由、群馬に入り・・・どうしても「ぐんま(群魔)」に行きたがるみたいである・・・一路東京へ。
確かに、“一般的なツーリングクラブ”では決して発想しえないルートである。
ソロや少数ならいざ知らず、これだけの所帯でこれだけのことを当たり前のようにこなしてしまうなんて・・・ん〜、、Wonderfull!(Bunderber!(独語))
なんにしても、まだまだ先は長いのである、とっとと出発しましょうか。
☆Stage12.フラッグシップの重圧
2日目13:30時頃 上越自動車道柘植JCT付近
姥捨S.Aで感じた漠然としたもの、それがまさかこんなことだとは思いもしなかった。
“バックレ防止”の為にJCTで後続を待ち、上越道へ誘導、最後尾の[ばたやん]を確認の後、前方部隊を追っかけることにしていたのだが、“Monja”を駆る[みこやん]通過の確認を最後に、一向に現れない[ばたやん]と[SHIN]。
ようやく現れた二人を引っ張って行こうと、先頭に立つ。この時のマシンはブラバ@私、ブラバ@SHIN、隼@ばたやんの国産フラッグシップの3連星。
JCT通過後の長い直線でミラー二人を見ながらアクセルを開けて行くが、見るまに[SHIN]が離れていく。見るからにその速度は80km/h以下。ここは高速道路上、あまりに危険なその走りや、車の流れのことも考え一旦路肩に停車させた。
聞けば“ブーツが合わない”らしく足が痺れてしまったのだとかで、ブーツを脱ぎ足をマッサージし始める有り様。
いくらなんでもそこに長居するには余りに危険すぎるし、道交法上では違法でもあるので、最寄の「千曲川さかきP.A」まで走ることにしたのだが。。。
P.Aに到着後、事態の概要を[殿]にメールで連絡した後、詳しい話を[SHIN]に聞いてみる。「横風に煽られてか、ブラバのハンドルがブレるのでアクセルが怖くて開けられない。。。」
念のためマシンのガタの有無を確認するが、その兆候は認められなかった。
なんにしても、この先天候は悪化すれど好転することはまず望めない。気温が下がれば雨に霧、東京に近づくにつれ大渋滞も予想される、決して安易な行程ではないのは確かである。
それを鑑みて、ここで離脱を決意した[SHIN]であった。
(その後、某所で仮泊、翌日東京方面を目指すことになる)
とにもかくにも、[ばたやん]と二人、心配しているだろう皆の待つ横川S.Aを目指し、どこかやるせない思いを胸に高速巡航を続けたのだった。
☆Stage13.面目躍如
2日目16:00時頃 上越道横川S.A
[SHIN]と分かれてからと言うもの、その走りは巡航と呼ぶに相応しいものだった。
途中、仕掛けてくるスポーツカーも在りはしたが、交通量が増えるに従いその力も発揮することも出来ないようだが、しかしこちらは相変わらずのペースを維持。
「ふっ・・・」と思わず[殿]よろしく失笑せずに居られない心境ではあったが、それはともかくも、流石にガソリン残量が心細くなってはいた。
かつて、予想もし得なかった超高速巡航による鬼の燃料消費のために肝を冷やした経験があるだけに、燃費走行も考慮はしたが、やはり先を急ぎアクセル開度は何があっても一定を保持する。
これが効を征して、無休油で到達出来たが、流石に残油はかなりきわどいものだった。
そして、思ったとおり、皆一応に不安な面持ちでわれ等二人を迎えてくれた。詳しい状況報告に、その反応も様々ではあったが、一様にその先の道中を心配していた。
確かに高速道を降りて、高速走行中に横風?でフラレる??ことは無いだろうが、そこは長野の山の中、幾多の峠を越えねば東京へ帰りつくことは出来ない。
もっとも、適当な市街地で宿を求めれば話は別なのだが、彼の所持金のことにまで話が及ぶと流石にこればかりは察し様がなく。。。
ただ無事の帰宅を祈るしかなかったのである。
なにわともあれ、我らも更に歩を進めることにした。連休最終日とあって既に渋滞は尋常ならざるものになってきている。
途中、上里S.Aに寄ろうかとも考えたが、先着隊は既にここでかなりの時間を費やしている。
となれば・・・
「一気に高坂S.Aを目指そう。強行軍ではあるけれど、このメンバーでは問題無いだろうし」
と、出発準備を始める。
流石に日も落ちてくると気温は下がり、この頃から霧雨がシールドを濡らすようになっていた。
気温の低さと“予感めいたもの”を感じて雨具を着込む。大自然の中で生きてきた熊の言うことだから、と妙に納得して他のメンバーも雨具を着込んでいた。
もっとも、この霧雨と言うのは案外クセモノで、しっとりシールドを曇らせてしまい視界を遮ってしまうし、長時間曝されていると存外ずぶ濡れになってしまうものである。
ずっしりと立ち込めた雨雲のために、暗くなるのも普段より早いし、おまけにこの先果てしなく続く渋滞。悪条件は無情にも積み重なっていく。
そんな闇に包まれ始めた上信越から、関越道に入る頃には幾分渋滞も緩和され・・・と言っても相変わらずの渋滞で、スリ抜け走行が続くのだが・・・高坂S.Aに辿り着く頃には疲労もピークを迎えようとしていた。
☆Stage14.幕引き
2日目20:00時頃 関越自動車道高坂S.A
「着いた〜〜!」
「いや〜、流石に長かった。単純巡航ならまだしも、これだけ渋滞が続けばねぇ」
「それにしても赤い海とは巧いこと言ったもんだよな」
雨で濡れた路面に幾重にも重なる車のテールランプの明かりは当に赤い海そのものだった。
おまけに所々で巡航できるような場所さえありはしたが、とても「“高速”道路」とは思えない、言わば惨状を呈していた。
自然界の予想に反して、ざっぷん!と雨に降られることはなかったが、その道中はずっと霧雨が降り続き、前車の跳ね上げる水しぶきと相まって、視界は最悪だった。
なんにしても、事故も無くここまで帰って来た。
そして皆、ここまでの無事を祝う。
ある者は缶コーヒーを片手に、またある者は肉まんを頬張りながら、そしてある者はタバコを燻らせながら・・・。
流石に、「ワイングラスを片手に・・・」と言う訳には行かなかったようだが、[殿]もコーヒーカップを手にここまでの無事を喜んで居るようだ。
「確かに、アクシデントは幾つかありましたが、ここに居られることは・・・」
最後の挨拶が[殿]によって始めされる。
皆一様にこれまでの渋滞で疲労の色は隠せない様子ではあるが、それ以上に楽しかったこの2日間を彼の言葉を聞きながら思い起こしているようだ。
気が付けば、いつもの顔がそこにあって、いつもの様に笑っていた。
そして・・・
思わぬ長旅も、ようやく終焉を迎えようとしていた。
☆エピローグ
「南海上にある秋雨前線は明日以降その勢力を弱め、代わりに移動性の高気圧が・・・」
帰宅して点けたテレビから聞こえて来た天気予報。皮肉にも結局この日降りつづけた雨は明日にも上がるらしい。しかし、それもまた長続きはしないのだが。
今年の定例ツーリングは、何かと雨に祟られている。
年始早々に時雨、春先には春雨、夏を前にしては梅雨、そして今回の秋雨。。。
(雷雨は魔族な方の専売特許と言うことで・・・)
ここまで雨に降られると流石に誰かの陰謀か、それとも何かが憑いているのかと訝しく思わざるを得ないものがある。
もっとも、その雨の中で幾多の物語が生まれてきたのだが、それはまた別の話である。
とにかく、今年も恒例の「お泊りツー」は幕を閉じた。
「もしかして来年も雨かな・・・」
流石に毎年の様に雨雲が付きまとうこの時期にこの「お泊りツー」を決行すること自体、雨を好んでいるとしか言いようがないのであるが、まぁ、くらげ的ツーリングからすれば雨が降ろうが、濃霧の中を走ろうが、大渋滞に巻き込まれようが、何度もUターンを繰り返そうが、犬にグローブを取られようが、どうってこと無いのかもしれない。
と言う訳で、今回の物語はこれでおしまい。
その後もきっと、まだまだ謎と爆笑のくらげ達の冒険はドコまでも続くことだろう。
おしまい
他の写真は
参加者一覧
殿@DUCATI 996
かず♪さん@BMW R1150GS
つきさん@BMW F650CS Scarver
あい♂@D-Tracker
JAY@CBR900RR
Mにゃん@DUCATI M900S
ぽこちゃん@CBR600F4i
ばたやん@GSX-R1300
あっちさん@CBR1100XX
マツバラさん@FZX750
SHIN@CBR1100XX
TAKAさん@ZRX1300
マツイシさん@W650
マツイシさんご友人@BMW 1100
ダサMac@CBR600F
みこやん改めみこぼー@GPz900
びっとまん@CBR1100XX
日帰り組
つきさんの「おとうと」さん@SV650S
そーまさん@VX800
ヨッシーさん@ZRX‐12R
ぱとらっしゅ@Djebel250