『愁雨来たりなば』
Edited by Mにゃん
☆プロローグ
「秋雨前線の影響で、太平洋側を中心に雨模様と・・・」
週末の天気を伝えるお天気キャスターから思いもかけない言葉が発せられる。
当初、週間天気予報では週末はいい予報となっていた。今年こそはと胸躍らせた者もこの時ばかりは少なくなかった筈である。
しかし梅雨前線よりある意味やっかいな、秋雨前線が週中にいきなり南下、大きく予報を変えることになったのだ。
もっとも、「女心と秋の空」、好天が長続きするとは端から思っては居なかったのだが、実際に雨の予報となると、やはり気は重たいものである。
4年目に突入する雨のジンクスを引きずって、また一つの旅が始まろうとしていた。
そして今回もまた、珍道中となろうことは想像に難くない。
☆Stage1.幕は上がり
1日目(9月15日)07:30時。中央高速道談合坂S.A
時を遡ること2週間前、この地よりまた新たな伝説いや「神話」が始まり、そしてその幕を下ろしたことは今だ記憶に新しい。(『日帰り1,000キロツー』会長のHP参照)
その「始まりの地」にいつもの顔が揃い始めていた。しかし、いつもと違うのは皆一様に大きな荷物を積載していることだろうか。
中には今日だけの言わば「お見送り」を決行する者も居て、他に比して軽装ではあるものの、しっかりと雨具だけは用意しているようだ。
集合時間を過ぎてもまだ予定者数名の顔が見当たらない。
この日も世間様は連休とあって行楽地へ大挙出動する観光バスや自家用車、我等と同じくお泊りツーに出かける多数のライダー達であふれ返っているがために、それに紛れ込んでしまっているのだろうか。
いや、実のところは別なところに原因があるようで、実は八王子料金所を過ぎてほど無く、恒例となった大渋滞、かなりの車が列を為していたのである。
「マル走渋滞」でないだけマシなのだろうが、のっけからこんな渋滞に巻き込まれてはこの先が思いやられるなと、一人ごちた者も少なく無い筈だ。
いつもなら真っ先に集合場所へ愛機を並べている[かず♪]さんと、先日あっと言う間に大型免許を取得して、早速愛機をBMWへブランニューさせた[つき]さんもこの大渋滞に巻き込まれて到着が遅れてしまっている口だった。
もっとも、遅刻と言っても20分程度、「殿様時間」からすれば可愛いもので、出発前の談笑時間内のことである。まして、これに更に大きく遅れる者も居たのだから。
果たして、いい加減出発の時間も過ぎてしまっているので、そろそろ出発の準備を始める。
と、その前に[殿]から簡単なルート説明とお初?の方の紹介が行なわれた。
[TAKA]さんの知人である[マツイシ]さんのその友人さん。
[つき]さんの弟“のようなもの”(当人談)と言う俗称[おとうと]さん。
いずれも大型バイクを駆るベテランのようで相当の峠ジャンキーのようであるが、それは後々明らかになるからここでは多くは語るまい。
なにわともあれ・・・低く立ち込める曇天の元、次々と最初のステージ「高速道フリー走行」へと向かうのだった。
☆Stage2.ランデブーポイント
1日目09:00時 中央高速道双葉S.A
幾分交通量は大目ではあったものの、それまでの渋滞に比べればはるかに快適な走行を終えて、さほどの時間も要さずここへ到着した。
リアに多量の荷物を積載しているだけとあって、流石にフリー走行といえどもいつもの様にカッ飛んで行く者は居なかった。
と言うのも、そのカッ飛び派の主要な“要素”である、先頭集団にあってなりふり構わず?その「萌」を活力に全開そして全壊の[JAY]と、魔女ッ子として既に自他共に認める存在にまで成長した[ぽこ]ちゃんと、ここで始めて合流となったからだ。
当初の予定ではここで既述の2人と合流の後、すぐの出発となるはずだったが、如何せんまだ合流できていない、正確には談合坂S.Aに時間内に到着出来なかった[SHIN]の到着をここで改めて待つことになる。
その間、「日帰り1,000km」の達成の証を“ステッカー製造を公金で賄う痴呆公務員”から手渡されると、再びあの熱き日の記憶を、あの感動を今更のように思い起こしてしまっていた。
とその時、予想通りの電話が、携帯電話に着信。
「ワン!(訳:まだぁ〜?)」
昨年、修学旅行生でもそんな騒ぎはしないだろうと言うほどのバカ騒ぎを延々と演じている頃、遠く名古屋からはるばる日光まで単身走ってきた先代隊長の[ぱとらっしゅ]だった。
夜間行軍が常なのか、「小屋」をまたしても夜の内に出発し、合流予定時間のはるか前に到着、上がらない本隊の速度と相まってかなりの時間を待ちぼうけ喰らっているとのことである。
然り、忠犬八公と言えば聞こえはいいが、待っている当人は付近のファミレスで
「ゥ〜、、ワワン・ワンワン!ワン・ワワワンワン!!ワぉ〜ン!!」
(訳:ねえちゃん、エアコン効き過ぎなんじゃ!ちと考えて温度設定せんかい!おみゃ〜っ!!)
と店員にイチャモン付けていたらしい。それもたった1杯のコーヒーをオーダーしたのみで。。。
ある種悲鳴じみた電話もあったことだし、この先のルートを考えると、待てど暮らせど来ない[SHIN]には悪いが、一足先に[ぱと]の待つ「諏訪(すわ)I.C」を目指すことになる。
☆Stage3.アテント化進行計画
1日目10:30時頃 中央高速道諏訪I.C付近
約束通り彼は居た。果たして何時間待ちつづけてくれていたのだろう。
新しい愛機、それまでの黒く重厚なリッターバイクとは打って変って、一転、街中でも軽快を誇れるオフロード車「DJEBEL 250」との相性もすこぶるいいようだ。
再会を喜び、到着する仲間と次々に抱擁しあう様は、お互いに匂いをこすり付けあい「仲間である」と確認しているようだった。
「役者は揃った。では出発〜!」・・・と、「待った!待った!!」
今回、新たに大陸弾道弾とも言うべき性格をも秘めた「ブラバ」を駆り、単独本隊を追撃しているはずであろう[SHIN]の姿がまだ見えないのだ。
その愛機の性能を持ってすれば、本隊追跡など容易ではあるのだが、なんせ事実上の初舞台。えんやこらやと必死に走っているのだろう。
果たして、彼の到着後、これから向かう山々を前にして給油を済ませることにした。
1台、また1台と給油が完了し、ではそろそろ・・・と思った時、
「あれ?マツバラさんは?」
「え?先に行った?」
「バックレたんじゃない?」
「鬼門の料金所で跳ね返されてた様子はなかったけど。。。」(○月ツーレポ参照)
「お〜い、だれかマツバラさん知らな〜い?」
なんて会話が飛び交う中、[殿]が所在確認のため電話を入れてみると
「え゛?須玉(すだま)I.Cに居る??」
確かに似ていると言えば似ているかもしれない「すわ」と「すだま」。しかしこうして文字にしてみると「す」の字しか合致していない。(母音は「す→う」「ま・わ→あ」で二つ同じではある)
ここにも“アテント”の魔の手が伸びて来ていると言うことなのだろうか。
当然、彼の到着を待つことになるのだが、いくらなんでもこのSSに居座り続けることも出来ないので、付近のコンビニへ移動となった。
待ち続けること暫し、シールド越しにも照れた雰囲気をあらわにした[マツバラ]さんが到着。
さて・・・、と思うが時計の針は12時近くを指しており、この先まともな食事処など皆無であろうことから、くらげ的には早め、でも世間様からすると定時の昼食となったわけである。
ん〜、それにしてもペース悪すぎじゃない?今回。。。
☆Stage4.マスター・オブ・アテント
1日目13:00時 釜飯屋前駐車場
「食事処・峠の釜飯」と聞こえはいいが、実はドライブインにちょっと毛の生えた程度のものなのだが、流石に昼食時とあって、屋内は観光客でごった返していた。
無論全員が座れるような場所が空いていようはずもなく、空席を求めて右往左往していると、本来なら、団体客用として使用される場所であろう広間を店の好意で解放して頂いた。
たしかに、その時居た中では我等が一番の大集団であったのは事実であるのだが、その他の客が陣地取りに躍起になっているその傍らで、広々とした空間をドッかと占拠していると言うのは、少しばかり気が引ける反面、嬉しい心使いだった。
そんなこんなで昼食を済ませ、昼食後の一服を、愛機の傍らで暫し過す。
と、ウェットティッシュでそそくさと愛機の汚れを落とす[TAKA]さんの姿がなんとも微笑ましく目に飛び込んできた。
んがっ、、、そ・そ・その手にしているものは・・・
『成人用おしり拭き』
それを見た他のメンバーから
「それってTAKAさんの愛用品?」
「TAKAさんってもうお世話になってるんだ・・・この年で。。。(哀涙)」
「今日からハンドルネーム替えて、Master of Atent(オムツ師)、略称MOA(もあ)だね」
好き勝手言われ放題である。
さて、そろそろ出発しなければ昨年同様、宿への到着がとんでもなく遅くなると言うことで、そそくさとその場を後にすることにした。
「ん〜・・・これから乗鞍と言うのは時間的に厳しいな。。。」
「だったら宿でのんびりってのも手じゃない?」
「有志で個々に乗鞍へ行ってもいいんだし。」
「温泉・温泉♪」(マジで混浴を期待していたらしい・・・>JAY)
「飯♪飯♪飯♪」(って喰ったばっかだろうっ!・・・>あい♂)
「酒!酒!!酒!!!」(やはりアナタは・・・>○○)
本来なら、峠・峠の峠三昧なルートをこの先延々と走りつづける予定であったのだが、止む無く時間的制約から大幅ショートカット、一路岐阜県境の奈川村を目指すことになる。
「ふっ・・・では、参ろうか!」
☆Stage5.魔族の証明
1日目14:30分頃 権兵衛峠
とにかく、バイクが“起きていることがない”のである。
右に左に連続するタイトコーナーを果たして幾つ越えたであろうか。ブラインドコーナーをクリアーしても、またしても目の前にはコーナーが現出する。その一つ一つを、確実に、それで居てアグレッシブに走破する。
中でも、[ぱと]と同じくそれまでの大型マシンから一転、「D-Traker」で軽快と言う言葉が中途半端に思えるほど、軽い挙動で次々に迫り来るコーナーに、全く臆することなく飛び込んで行く[あい♂]の姿がなんとも印象的だった。
[殿]の「どかってぃ」でのライン取りもシャープではあるのだが、この時の[あい♂]のラインはシャープなどと言う表現を遥かに越えたものだった。
マシン自体の軽量さもその一因なのだろうが、何より彼のライディングスタイルに完全にマッチしていると言うことなのだろう。
もっとも、[かず♪]さんはこのコーナーをあの巨大マシン「BMW 1150GS」で先頭切って走っているのだからなんとも驚きである。
負けじと[JAY]と[ぽこ]ちゃんもその[かず♪]さんに喰らいついていくのだが、何よりその間に挟まれた[TAKA]改め「もあ」さん(爆)は後ろから突っつきまくる“萌コンビ”の余りの過激な「つんつくつん」に半分涙目、すんなり道を譲ってしまったらしい。恐るべし、萌パワー!
その後方には「女帝伝説」の[つき]さんと、その従者[おとうと]さん。[ヨッシー]さんはノンビリ遥か後ろを寝息混じりに?走っているから・・・??峠の役者が一人足りない。
そう、「悪魔っち」こと[あっち]さんである。
待望の峠攻めとなり、俄然テンションも上がっていったはずなのだが、なぜか程なく突然そのペースがダウンし、そしてついにはストップしてしまう。
ミラー越しに彼を心配していると、右手を上げて「大丈夫!」のサイン。そして再び走り始めたのだが、依然ペースは上がらず、またしてもストップしてしまう。
「おいおい、まさかココ(峠のど真ん中)で押しガケは無いだろうなぁ!?」
これはトラブルか・・・と予感したのだが、何の事は無い、時々発作的に起こる?「足がつった“だけ”」らしい。しかしその本当の理由とは・・・。
一口に魔族と言っても・・・まだまだ人類には解明できない謎は多そうである。
☆Stage6.チェックポイント・チャーリー
1日目16:00頃 国道19号と361号の合流地点
「[つき]さん、下り坂で散る・・・」
権兵衛峠の下り右コーナーで、オーバーランしてしまったようだ。その勢いはブレーキングで殆ど減殺されてはいたが、おニューのマシンについた擦り傷が痛々しい。
本人は幾分アドレナリン放出で興奮状態ではあるが、取り合えず怪我も無く一同安堵する。
破損してしまったウィンカーの応急修理を済ませ、再び走り出したそのペースは流石に幾分落ちてしまっていた。(いや、んなことは全然なかったような気が。。。^^;byMにゃん)
とは言うものの、他のものならビビリモード全開のところ、従者の[おとうと]さんを露払いに進むその様はやはり「女帝」の名に恥じぬ威風堂々としたものだった。
それから走ること暫し、時には路面工事に伴う未舗装路、180度近い幾多のヘアピンを通りぬけ、国道361号との分岐・合流地点へと辿りついたのだった。
ここで改めて[つき]さんの転倒のダメージをチェック&確認するが、問題は無いようだ。
そうして・・・
遠路名古屋から馳せ参じた[ぱとらっしゅ]と家族思いの[そーま]さん&[ヨッシー]さんの日帰り組とお別れとなる。
別れ際、互いにそれからの安全を祈りつつ、皆おもむろに手を上げる。
「ありがとう、そしてまたいつの日か。。。」
涙を振り払い?惜別の後、一行は更に宿を目指しての驀進を続けることになった。
そうして後、残すところもあと僅かとなったとき、本来なら乗鞍攻略のためのエイド・ステーションとなるはずだったであろう麓のとあるSSで本日最後の給油を済ませることにした。
その道路を当の乗鞍から下って来たと思しき車とバイクが次々に通過していくのだが、その顔には一様に疲れと、なぜか哀れみが見え隠れしていた。
訝しく思い、同じSSに給油のために入って来たドライバーに山の様子を聞くと、“凄い”を通り越した“どえりゃー”いや、“めっさもっさ”な渋滞だとか。
朝早くに登頂に挑み、ようやくこうして下りてこられたのだとかで、バイクでも数時間は確実に必要らしい。(だれかの様に「黄色切断(おうしょくせつだん)」でもすれば別なのだろうが。。。)
この情報に壱分の望みを託していた「走り足りない?面々」も流石に乗鞍登頂を諦めざるを得なかったようで、よい子もだだっ子もみんな素直に宿へ向かったとさ。
しかし、まさかあんな形でリベンジするとは、この時は思いもしなかったのだが。。。
☆Stage7.今夜も宴をありがとう♪
1日目16:30時 奈川村の某コテージ
お決まりとなった「車返し」に、観光客からの白眼に絶えながら、そして無事に本日の宿へ到着することが出来た。
既に霧雨も吹きはじめており、うっすらと路面も所々湿っていた。積載した大量の?荷物を降ろし、部屋へとなだれ込んでいく。
(ここで[おとうと]さんは『女帝』の護衛から開放、帰路(全て下道の!)についた)
ちょっとしたまったりな時間が流れ、ある者は早々に風呂へ飛び込み(混浴は無いんですか?などと質問しないように!>JAY)、ある者は高らかにイビキを奏で、またある者はビールを片手に至極の時を過していた。
それぞれの時間がゆっくりと流れている傍らで、「宴」準備が着々と進められていく。
そうして「宴」が始まればいつもの光景。
しかし、今年は昨年のような「狂宴」ではなく、かなりジェントルなものだった・・・と思う。
いずれにしても、素晴らしい料理にお酒。
([かず]♪さん、諸々のお手配有り難うございました!)
そうして、くらげな夜は更けていくのである。