’02年5月19日
Written by びっとまん
Edited by Mにゃん
「ifの喜劇」
0.プロローグ
西暦2002年4月13日土曜日、都内某所。明石標準時08時30分。
一人の男がバイクを磨いていた。
至るところに改造の手が加えられたHONDA CB1300SFである。
トップスピードこそフラッグシップと呼ばれる最速マシンには及びもしないが、その分低速からのトルクは群を抜いており、またマシン自体の信頼性も高い。
エンジン、フレーム、ホイールと丁寧にウエスで拭きあげられ、朝日に煌いている。
男はふと時計を見た。約束の時間まではまだあった。そして物悲しげに愛機に目をやる。
「お別れだな・・・」
そう呟き、また作業に没頭した。
西暦2002年5月19日日曜日、明石標準時間17時00分
ようやく辿りついた談合坂S.Aにはいつもの顔が揃っていた。上空からはあの雲は消えている。
「もし、あの時あのままあの地へ入っていっていたら、どうなっていたのだろう。間違いなく無事に帰って来ることもできなかっただろう。」
もし、あの時・・・そう思った直後、天空に雷鳴が轟いた。
1.次元移動
2002年5月19日日曜日、御江戸標準時06時00分
ブラウン管に映ったキャスターはこの日の天気予報を告げていた。
「・・・午後は一時的に雷を伴って激しく雨の降るところも・・・」
寝起きのぼんやりした目で窓の外を見やる。部屋からみえる空は雲ひとつ無い快晴である。
だがどうも違和感を拭い切れずにいる。
身支度を済ませ出撃準備を整えると、愛機の元へ歩いていった。
そしてエンジンに火を入れ快調に走り出す。
しかし・・・“いつも”と何かが違う。
説明のつかない違和感を覚えながら集合場所である関越自動車道高坂S.Aに付いたときは既に参加メンバーの、“いつも”の顔が並んでいた。そのすぐ後から聞き慣れたあの音。
「カラカラカラ・・・」
「殿!」と声を掛けようとしたその時だった。
「“上様”におかれましては本日も定刻のご到着。本日の天気、正に天佑と存じ上げまする」
その言葉を発し膝をついて深深と頭を下げたのはお側用人[あい♂]。その傍らには広報奉行の[Mにゃん]も控えていた。
「うむ、皆の者も大儀である。」
そう頷くと両手を打って小姓を呼んだ。
「合議だ。道絵(地図)を持て!」
小姓と呼ばれた[ダサMac]が菊の紋章があしらわれた箱を抱えてやってきた。
「本庄児玉から神流湖を経由。さらに奥秩父へ進み・・・」
この日のルート説明が行なわれる。
「巳の刻より天候が急変する可能性ありとの報告が気象奉行所より届いておりまする。」
「わかっておる。なれば昼宴の折に今一度合議にはかり、以後の進路を裁可すればよかろう。」
ともかくも第一のチェックポイントである本庄児玉I.Cを目指してくらげの進軍が始まった。
しかし、今にして思えばいつもの朝礼がこの日だけはなぜかなかった。
雨雲を避けて走るべく、ルート選定に余念の無い面々。^_^;
2.スリップ
同年同日、御江戸標準時09時00分
毎度のことながらこの高速走行だけはフリー走行である。
しかし、今回はカッ飛び派と呼ばれるメンバーが平塚〜高坂間を2時間と言う脅威の時間で走りきった[あっち]さんだけとあって至って平和な走行が続いた(はずである)。
無事本庄児玉I.Cに到着して通行料を手形(ハイカ)で支払い、ゲートを通過する。
しかしその時タンクバックの中に忍ばせておいた“新渡戸”と“漱石”をばら撒いてしまったのである。
「お恵みだぁ。。五右衛門様からのお恵みだぞぅ。」
これを見た[キク]さんはそう村人に触れ回っていた。
お恵みを求めて群がるくらげ。。。。(笑)
「ま、待て!それは違う!!!」
群がる村人を蹴散らし、辛うじてその“御札”を回収したものの、“新渡戸”が足りない。
すると不思議そうに手にもったその御札を眺める[ながはま]さんが後ろにたたずんでいた。
「変った御札だなぁ。。。」
「変った御札?」
「御札には上様が描かれてるでの〜。。。こんな御札は見たことがない。」
「殿がお札になってんのか?」
あまりのリアルさに思わずバイクを倒すところだった。
夢だ、夢に違いない。奇妙に現実的で、そして非現実的だ。夢で無いとしたらなんなのだろう。ありふれた与太話の如く夢の世界にでも飛ばされたのかもしれない。
だが夢でも現実でも、どちらでも構わなかった。
夢の中であろうと、全力で楽しむことが大事なのだから。
3.急転
「(燃料)補給処が休業?これでは鉄馬が動かぬではないか。」
本庄児玉から国道462号を一路西進する予定だったが、ガソリン補給のため市街地へ続く県道44号へ入る。
しかし地図上に存在するスタンドは休日閉店らしく、人の影もない。
くつろぐ面々。。。
やむなくそのままこの県道を走行、ようやく見つけたガソリンスタンドで給油を済ませて後、国道462号へ戻り、神流湖へと辿りついた。
「指揮官先頭」と言う古来からの伝統にのっとり[殿]自ら先頭に立ち、ワインディングの続く神流湖畔を単縦陣で突き進んでいく。
番犬部[マツバラ]さんと護衛足軽[ばたやん]に守られた後方集団の少し前を走る[Mにゃん]は、少し見ないうちにすっかり「○○てる」走りに変貌していた。
果たして秩父の山々が見え始める頃から上空に雲が広がり始めていたのである。
「やはりそうなのか。。。」
道の駅「大滝温泉」でつかの間の休憩を取っていると東の空はただならぬ雲で覆われ始めていた。
天気さえよければ絶好の休憩ポイント“峠の茶屋”であるのは間違いないが、時間的制約をうけたこの日だけはそうノンビリしていられない。
「“上様”先を急ぎませんと・・・」
この怪しい雲行きに“天守閣で演説中”の[殿]もその言葉を切り、再出撃の準備を始める。
殿様、天守閣にて演説中。。。(爆)
そしてひたすら単調な下りの続く雁坂トンネルを抜けると上空からあの雲は消えていた。しかし・・・ポツリ、ポツリと雨滴が落ちてきたのである。
「馬を引けぃ!」
それは逃走と評されてもおかしくないほどの素早い退散劇だった。“ちんたら”“まったり”などという言葉はそこには微塵も無かった。
4.宴
数滴の被弾はあったものの、辛うじて雨雲から逃げ切ることが出来た。そしてようやく「民芸茶屋 清水」で遅めの昼宴となったのである。
“いのぶた”を主食材とした料理が自慢の店らしく有名人も幾多数多訪れているようだ。
殿の御膳班、鍋班、石焼班、雑食班に店員に強引に班分けされると
「うちにもいろんな“藩”(ナルシス、パン屑、バックレ、押しガケ、狼煙・・・etc)があって勢力争いが絶えなくて・・・」
姫こと[POCHI]さんのこの言葉に流石に店員も表情を蒼くしていた。
班分けにより移動中。。。
暫くの待ち時間の後、まず雑食班のテーブルに料理が運ばれる。ありきたりなラーメン、ありきたりなそば、ありきたりな・・・そこにありきたりなおこちゃまランチが並ばなかったのは[みこやん]の忍耐の賜物である。
忍耐中のみこやん。 それに引き換えこの二人。。。(笑)
なかなか焼けないバーベキューに反し、正確には溶岩石から削り出してきた石板での焼肉であるのだが、鍋の方は早くもいい香りを漂わせていた。
ふと気が付けば鍋班のテーブルは「餓鬼」の壁で囲まれている。
餓鬼くらげが群がる鍋^_^;
「上手そうじゃの。わしにも喰わせぃ!」
「ダ〜メ!!」
箸を振り、言下に[[殿]をあしらったのは[あい♂]だった。某藩の藩米を相方と“トモに”食べ尽くし“裏兵糧攻め”でその藩を没落させたツワモノだけのことはある。
「こうすればいいのよ、ほれ!」
焼けない石焼に業を煮やし、ついに石焼用の野菜を鍋に放り込みはじめた[POCHI]さんだった。
それを見ていた“焼けない焼石”を前にした[TAMA]さん以下の面々の目のなんと悲しげなことか。
一方、お預けな人々。。。
「くぅぅ。。。ならば・・・そこのモノ。うどんを持って参れ!」
一方の[殿]も痺れを切らし、具の欠片すらなくなった鍋にうどんを放り込む。
「皆の者も食ってよいぞ!」
「ありがてぇ!」
途端、至るところからすざましい勢いで箸が殺到、瞬く間にそのうどんも消えうせていた。
完食っ!(爆)
その影でモノ言わず密かに、隠し持っていた鍋を頬張っていた隠密[ひろみ]さんのことが明るみに出るのは、まだ先の話である。
ようやく石焼開始!
5.鳴動
同年同日、御江戸標準時15時00分
遠く山の上にいつしかまたあの雲がかかっていた。黒く、そして重厚な、なんとも怪しげな雲である。
「合議だ!気象奉行をここへ。」
重大な軍議とあって各奉行も集められていた。天候の急変も考えられることから慎重なルート設定をしなければならないとあって、皆緊張の面持ちである。
「このまま松姫へ進軍したいがどう思う?」
「この携帯式電探(i-mode)を見る限りでは今暫くは問題ないかと。」
「よろしい。では予定どおり進撃して松姫を攻略する」
「御意!!」
真っ先に立ち上がって答えたのは一番槍隊足軽[あっち]さんであった。しかし・・・
「ゴロゴロゴロ・・・」
“あくまっち”の声に呼び寄せられたかのように突然鳴り響く雷鳴。
「上様これは・・・」
「うむ。先を急いだ方がよかろう。」
慌てて身支度を整え、店を出る。しかし無常にも上空からは既に水滴が落ち始めていた。
そして小粒だった雨も走りはじめると大粒にかわり、いつしか滝雨のごとき大雨となっていったのである。
6.大本陣直属
とにもかくにもと、先頭の[殿]を悪魔の形相で追い立てて先を急がせると、いつしか雨もあがり、路面もドライに変っていた。しかし、後ろには給司足軽[コデラ]さんのみ。
「後続はどうした?」
先を急ぐあまり、途中の信号で後続が分離してしまったことにすら気が付かなかったようだ。
分離隊の先頭は[あい♂]。先を行く[殿]を見失い、このとき殿は当初のルートと違い機転を利かせて?交差点を直進、それを知らない[あい♂]は軍議でのルートをそのまま進軍してしまったのである。
止む無くこの後続部隊=本隊はそのまま中央道へ上がり、一路談合坂を目指すことになる。
「我等も反転いたしますか?」
「たわけもの!」
[殿]が激昂した。
「あの空を見よ。反転すれば再びあの雲の中に入り込むことになろう。されど、これだけの少数部隊、松姫を攻略するには適度だとは思わんか?大本陣直属としての意地を見せぃ!」
「大本陣直属・・・松姫攻略・・・」一人[あっち]さんの目が輝いていた。
不運なのは偶然この集団に紛れ込んでいた[コデラ]さんだった。
「戦はゴメンだぁ。。。」
悲劇の舞台はここから始まるのである。
7.夢
「上様!上様ぁぁぁぁ!!」
その声は一向に届かなかった。助けを求めるその声は虚しく雨音にかき消されていた。
「エンジンストップ。。。バッテリーも死んだか・・・」
レース仕様のキャブレターで、しかもフィルター無し。こんな状態で雨天走行をする事自体が無謀だったのだ。
一人雨の中にひっそりとたたずんていた。
「御根多(ネタ)のため。上様をお守りするため。」
一番槍隊に連れられて松姫に侵入したまではよかったのだ。しかし、、、突然の雷鳴と豪雨。
携帯式無電も圏外のため不通。助けを呼ぶこともままならない。
「悪魔の棲む谷・・・か」
上空はあの雲で覆われていた。近くでまた雷が鳴っている。
寒さと飢えのあまり感覚が薄れて無くなっていくのにさほどの時間はかからなかった。
8.エピローグ
西暦2002年5月19日日曜日、明石標準時間17時00分
「びっとまん!びっとまん!!」
唐突なその声で我に帰った。
「上様は?」
「上様??何言ってんの!また何かネタでも考えていたのね。考えすぎるとまた鼻血出すよ。」
周りから笑い声が聞こえてきた。
「松姫に行ったんじゃぁ。。」
「行くわけないでしょ。どうしてもって言うんならこれからでも間に合うけど、私達はゴメンよ」
再び笑い声が聞こえてきた。
ここで登場!のTAKAさん
「あれぇ?このCBどうしたの?」
別企画に参加して偶然この談合坂S.Aで休憩をしていた[TAKA]さんが不意に問い掛けてきた。
「え?ああ、これはパパの・・・」
「へ〜、買ったんだぁ!」
同じビックネイキッド乗りとして仲間が増えたことに純粋に喜んでいるようだった。
「それにしても、凄い夢だったな・・・。」
「パパの亡霊にでもとり憑かれたんじゃないの!」
「綺麗な女性の幽霊ならまだしも“あの”パパのじゃぁねぇ。。。」
「やっぱりその亡霊も頭にネクタイ巻いてた?」
談合坂S.Aは笑い声であふれかえっていた。
完
出演者及び“上様”からのお言葉
お名前 | バイク | コメント |
マツバラさん
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FZX750 | 今日は「いつにも増して」睡眠不足だったのですか?(^_^;) |
ばたやん
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集 | おニューの護衛官ジャケットでますます護衛任務に精がでますな。(笑) |
コデラさん
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CBR929RR | パンチングメッシュの皮ジャケ快適そうでしたね〜。黒がシブいす。 |
あい♂
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YZF-R6 | 久々のツーはどうでしたか?走りにメシに満足というところかな? |
あっちさん
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CBR1100XX | 今日は先頭が○○てなかったので渋滞させてすみませんでした。(笑) |
Mにゃん
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DUCATI M900S | 今日は自他共に○○てると認める走りだったようで、確かにビバンダムくんも逝ってましたな。(笑) |
みこやん
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GSF1200 | これまた定例ツーお久しぶりでした!メシの食べっぷりからしても元気でなによりでした。(笑) |
POCHIさん
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BMW F650 | 今日は集合場所で「お待ちしてます」って言う資格がギリギリあってよかったです。(笑) |
TAMAさん
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VFR800 | メッツラーに履き替えてご満悦の様子でしたね。今度検討してみるか・・。 |
キクちゃん
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Hornet | このところキクちゃんネタがないような・・・。パン屑に次ぐネタお願いします。(笑) |
ダサMac
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RG200γ | 最近プラグを替えてる姿をあまり見なくなったのは気のせいだろうか・・・。(笑) |
2スト番長
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ウルフ | またまたお久しぶりでした!バイクは完調まであと一歩みたいですが、また走りに行こう! |
ひろみさん
|
GSXR750 | おニューのGSXR、かっこいいすね〜。ただ、ポジションからしても手強そう・・。(^_^;) |
ながはまさん
|
GSF1200 | ツーではお久しぶりでね〜。あいにくの雨でしたけど、また参加してください! |
ナンパされた好青年さん | バイクは? | 午前中まで参加されていたとのことですが、今度は是非フル参戦してください! |
びっとまん
|
CB1300SF | 満点パパの幻か?と思ったら・・。それにしても、今日は松姫峠でネタ作るには最高だったのに。(爆) |